最初「本格小説」のことをアンフェアの原作と勘違いしてて
友人に「それ推理小説とちゃうか」と突っ込みをいれられました。
まさにまさに、アンフェアの原作は「推理小説」でした…。
とんでもない勘違いをしたまま「本格小説」を読む羽目にならなくて良かったです。
この「本格小説」はエミリー・ブロンテの唯一の著作「嵐が丘」を日本版にしたような
物語なのですが、まさかこれと「推理小説」をごっちゃにしてたら、最初は
あれ?アンフェア…じゃないの?
みたいなとんちんかんなことを考えなければならなかったに違いない…。
こちらは荘厳な小説でございました。
失礼。
底本が「嵐が丘」なのですが、前半は「長い長い物語の序章」ということで
作者と思しき「美苗」という作家の女性が、東太郎という人の物語を元編集者に
聞くまでのお話です。
これがまた長い!
前半の250Pくらいを序章に費やすという大胆不敵な書き方です。
でもちっとも気にならないくらい、それはそれで物語として成立しているので
じりじりすることはあまりありませんでした。
作者が東太郎と会ってどのように思い、どのように接してきたのか、
彼がどのような態度であったかを客観的に知ることができる下地部分でもあり
ああ、あれはこういうことだったのか、と後半で納得できるようになっています。
そして後半の物語が始まるところもうまい。
元編集者がであった、東太郎の女中から聞いた話という体で始まる物語。
あたかもヒースクリフとキャサリンのような東太郎と、よう子の関係をはじめとして
三枝家、宇田川家、重松家というお金持ち一家の複雑な関係
独特の性格など、なかなか読み応え満点の世界。
途中から嵐が丘のことはすっかり忘れるくらい、独立したお話でした。
まさに「本格小説」です。
この小説に出てくる「よう子」という女性がとても複雑な人で
どのような正確かつかめないというか
美女ならまだしも、それほど美女ではないのに、見目麗しい二人のまったく
性格の違う男性に愛されて死んでいくのですが…
その三人の関係もとても不思議で…なんともいえないものがありました。
そして語り手である女中の富美子という人の人となりが語りに現れているのも
印象的でした。
彼女がひそかな思いをとどめているのが、なんとなく文章から読み取れるようで
最後のあたりを読むと、腑に落ちるという心地がしたというか…。
何重もの恋の物語をいっぺんに読んだような気がする本でした。
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