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ホテル・アイリス 小川洋子

染みだらけの彼の背中を、私はなめる。腹の皺の間に、汗で湿った脇に、足の裏に、舌を這わせる。私の仕える肉体は醜ければ醜いほどいい。乱暴に操られるただの肉の塊となった時、ようやくその奥から純粋な快感がしみ出してくる…。少女と老人が共有したのは滑稽で淫靡な暗闇の密室そのものだった―芥川賞作家が描く究極のエロティシズム。


博士の愛した数式しか知らない人には衝撃の作品かもと。

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私は平凡な学生で、どんなものにも汚されたくないと思う
普通の清らかな女子高校生であったが、この主人公マリは
親のいいつけで学校をやめ、「ホテルアイリス」に閉じ込められて
全ての自由を奪われ、時々自分のものを盗まれ、金の亡者と化した
母親に美しい髪の毛をシニョンに結ってもらう単調な毎日を
すごすという、少し浮世離れした生活を送っている少女である。
それ故に少々普通の少女とは異なる考え方をしているようでした。

それは恐らく、閉塞された空間に対する無意識の抵抗であり
自分の娘の美しさを誇らしげに自慢する、金にがめつい母への
あてつけであるように思われます。

老人に対して、たとえようのない快感を得ることができたのも、
恥ずかしい姿を晒すことに言いようのない興奮を得ることができたのも
すべて、「美しいと言われている私だけれど、本当はこんなどうしようもない娘なのよ」と暗に親を否定できるからだったのではないでしょうか。

蝶よ華よと育てられ、小さなホテルの受付に閉じ込められ
従業員にこっそりと物を盗まれ続ける毎日。

飛び出したい、汚されたい、私はもっと美しくない存在なのだ、
と力一杯の悲鳴が聞こえてくるようでした。

淡々と語られる物語の中で、異質な存在感と読み進めなければならないという
どうにもとめられない衝動は、「マリ」の声にならない叫びのせいだったかもしれません。

物語の最後に、彼女は自分の髪の毛を切り落とされることに、幸せを感じます。
全ての根源はここだったのだと、母親が執拗に美しく保たせた、椿油のにおいのする髪の毛だったのだと、象徴的に記述されています。

あれほど求めていた、翻訳家(老人)であったにもかかわらず、彼が海へ飛び込む際に
泣いて止めることもなく、死体があがっても何の表情も、悲しみも、感情も表さず、彼女は物語をおしまいにします。

髪の毛がなくなったことで、ある意味彼女は自由になり、老人が必要ではなくなったからなのでしょう。髪の毛を切ってくれる他人が必要だったのだと思います。


小川洋子という作家は物凄いですね。
なんというか、こういう本は古典でしか読めないと思っていました。
これだけエロティシズムな趣があって、人に好まれそうな内容ではないにもかかわらず、読むのをやめることができず、最後までぐいぐい引っ張られてしまいました。

言葉のひとつひとつにセンスがあり、すばらしいの一言です。

また、暗にこめられた意味を、理解するとこの本のすごさが一層わかるという
二重の面白みが与えられているような気がします。
それは、古典を読むときと同じような、なんとも充実した時間でした。

好き嫌いはあると思いますが、深い小説がお好きな方にはおすすめいたします。

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COMMENTS

葉桜月夜 : 2007/08/14 8:40 PM
 初めまして。本に関するブログを検索していてここにたどり着きました。私も小川さんの言葉の選び方が好きで、何冊か読みました。「ホテル・アイリス」は、何度も本屋で手に取る物の、裏表紙にあるあらすじを読んでは、購入を見送っていた作品です。この記事を読んで、読んでみようと思いました。私の一番好きな小川作品は、「博士の愛した数式」なので、衝撃を受けるかもしれませんね。
また、おじゃまします。
 : 2007/08/15 3:44 PM
■葉桜月夜様

はじめまして。コメントありがとうございます。
「ホテルアイリス」は「博士の愛した数式」と比べると、かなり趣が異なるので面食らってしまわれるかもしれません。ただ、ただの官能小説ではなく、意味を持って書かれたものとして読んでいただくと良いと思います。

こうした題材でも作品を書かれるんだなと新しい発見にもつながると思いますので、私はおすすめです!





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小川洋子〜静かで気高い世界 : 2007/09/27 2:07 PM
小川洋子〜静かで気高い世界
小川洋子さんの静かで気高い世界の雰囲気にムチューです。
TB URL >> http://nyamalibrary.jugem.jp/trackback/132