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友情;初恋 武者小路実篤

評価:
武者小路 実篤
集英社
¥ 380

若い作家・野島は、劇場の廊下で初めて杉子を見たときから、その美貌に心を奪われてゆく。彼のひそかな思いを知った年上の友人・大宮は、恋の成就のために力を貸すことを約束した。しかし、意外なことに杉子の思いは大宮に傾いてゆく…。友情と愛情、恋愛と失恋を描いた近代日本文学の代表的青春小説。



いやあ、主人公に同情した!
実はこの本持ってるけど、ナツイチの蒼井優表紙に負けてまた
買ってしまい、再読。

中身はすっかり忘れていたので新鮮な気持ちで読みました。


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【友情】

とにかく主人公が頭でっかちな上、ヒロインに過大なる評価を与えていて、神格化しているため、現代でよく言われる「キモイ」人となっている。そんな「キモイ」人だが、ある一定のつつしみは保っていて、ストーカー一歩手前でこらえていると言う状態なのが、ものすごく「恋する人」として共感できるものがあった。

しかし、会わずにはおれぬ、という己の欲に打ち勝てず、時々失敗し、絶望し、苦しみ、喜ぶ姿は、まるで自分のことのように気恥ずかしく、彼が失敗をすると、自分のことのように痛々しく思われた。

そして、どう考えても野島(主人公)の親友大宮の方へヒロインが想いを寄せていくのがわかってしまい、なんて哀れな奴なんだ野島よ、と思わずにはおれなかった。

気づいていないふりを貫いていた野島であったが、実は最初から「そうではないか」と心に抱いていた節があり、これまた哀れな人である。

そして大宮の頑なな意思はあっぱれであった。
なんというか、これほどまでに友を優先できる人がいるものか、と思われた。
しかし、そんな大宮も杉子の魔力には及ばなかったようで、最終的に野島を裏切る羽目になる。これまた運命というのか野島がかわいそうである。

最後の野島の二人の馴れ初めを知るシーンでは、あまりにも野島が哀れで、なかなか悲しい想いをした。

というか、最後の野島の対処の仕方はかなり、すばらしい。
そして最後の台詞が殊更、物悲しかった。同情せずにはおれん。

だがしかし、野島にはとても悪いのだが、これほどまでに同情をしておいて、何なのだが、めいいっぱい謝る、許してくれ、精一杯の謝罪をする、私も女の身から言わせていただくと、やはり大宮の方が好きなのだ。天と地ほどの差をつけて大宮の方を愛すると思う。それほど君は、女性にとって魅力が薄いというものだ。

申し訳ない。


【初恋】

友情と同じように、一方的にヒロインを好きである主人公のお話である。これはどうやら、実篤の実話らしい。全て実名であるそうだ。なので主人公=実篤ということだ。

この話の中で、実篤が「総理大臣になることは難しくない」というようなことを書いているのだが、自意識過剰な青年ということではなくて、子爵の息子で且つ、皇族の血を引いているということから、半ば総理大臣になろうと思えばなれる家系ということだそうだ。

あとで解説を読んでびっくりしました。高貴な方なのですね実篤殿は。

一方的に恋をする実篤さんのかわいそうさがまた「初恋」で明らかになっています。しかも「友情」の野島よりもかわいそうなことに、相談相手がまるで皆無。どれだけ陰気!というくらいに一人で悶々としておられるのですよ。実篤どのは。

そして行為はかなりのストーカー。
しかしいじらしい実篤さんは、必死で恋心を押さえつけるのです。
涙を流し、母を憎み、お貞さんを思うのです。

実話なので、非常に解説の必要な小説でしたが、面白かったです。
古典をこれほど面白く読んだことがないので、新鮮でした。

やばい、実篤は良いかもしれないと思ったくらいです。
三島より読みやすいです。かなり。

2編を通して読むと、やはり「友情」に軍配があがるかなと
いう感じ。衝撃のラストが決め手でしょうか。

大宮がやはり格好良い男なのです。
これは杉子でなくとも大宮が好きになるでしょう。


重ね重ね、野島よ、すまない。


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