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街の灯 北村薫

北村 薫
文藝春秋
¥ 500
レトロな香り
時代設定がたくみ
悪意のない物語


舞台は昭和7年。学習院女子高等科に通う、士族のお嬢様が主人公。
まだ、身分の差や貧富の差が明確だったころの、お金持ちのお嬢様が
日常で出会う不思議な事件やミステリーを、運転手の別宮ことベッキーさんと
ともに、解決していくお話。

昭和のはじめという時代は私にとって未知の世界である。
この年代に生まれてきたものならば、誰もがそうであろうが
10円でとてつもなく色々なものが買える時代であり、人と人の間に
身分が色濃く残っている時代でもあった。

それって今、このときに生きている私には知りようのない過去で
触れようのない過去なんだけれど、北村薫の描く世界に浸っていると
あたかも、自分がその場に立って物事を見てきた気分になれる。

まだ身分の差があって、お姫様と呼ばれていた時代…
ごきげんよう、この方、聞きなれない言葉遣い
軍人さんの宿命…。

生粋のお嬢様であったら、きっともっと堅苦しい心地がしたのだろうけれど
主人公の少し庶民的で、好奇心旺盛で、自分の身分をよくわかっている
身の振り方から、身分の高い人々の暮らし、逆の人々の暮らしを垣間見ることができる。

自分の中にしみこんでくるような文章だった。


懐かしい映画の名作、一度は聞いたことのあるような音楽の名前
古典で名作と知られる作品の数々。
時代のトレンドとして、出てくるものごとは
今、改めて手に取るようなものではないのに
語られる言葉の美しさに、一度目を通してみよう、耳を傾けてみようと
心をくすぐられる。

古典の掘り起こしという点においても、とても優秀な作品なのではないかと思う。

日々主人公の周囲で起こっているミステリーは当然のように
好奇心をかきたてられるものであるが、この作品の魅力は
時代をうまく切り取ることができている点も大きいのではないか。


本をとじると、ほっと息をついて、生きたことのない時代に思いを馳せる。
そんな心地を味あわせてくれる作品。



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ターン 北村薫


そういえば、ブログに北村薫の感想を書いていませんでした。
驚愕しました。今最も好きな作家になりつつあるというのに。

ということで、先日読んだターンの感想でも書きたいと思います。

版画を生業として、細々と暮らしている主人公。あるとき交通事故にあってしまい
それがきっかけで、事故前日を毎日繰り返す奇妙な現象に囚われてしまう。
繰り返す同じ毎日、誰もいない町、鳴らない電話、誰もいないコンビニ
主人公の運命は ―

これほど先へ進むほど鳥肌の立つ小説にはまだ出会っていない。
主人公の対話の仕方や描写の仕方に静かに訪れる変化に気づくと、ぞわぞわと
ああ、すごい、何この鳥肌、という感じに体が勝手に反応してしまいました。

毎日「くるりん」してしまう時間。
何をやっても全て元通り。
一生懸命書いた絵も、ある時間になったら、全て消えてしまう。
日記を書いても消えてしまう。
残そうと思っても残らない。

誰かに話したくても誰もいない
洗濯をしても、怪我をしても、全部元に戻ってしまう。

静かに静かに訪れる恐怖に、言い知れぬ感情を抱きました。
誰もいないところに行きたいとか、タイムスリップしてみたいとか
安易に考えてしまうこと、ありますよね?
だけど、もう、そういう次元とは違うものなんです。

毎日を繰り返す、主人公の静かな絶望は、本当に身に沁みました。
そして、後半の章に現れる彼のなんと救いであったことか。

それでも主人公は彼に対して、失礼なことを承知で嫉妬したり、するのです。
その感情が凄く生々しくて、この感覚私知ってる、となんども思いました。

口に出さないけれども、このような感情を持ったことがある、となんども思いました。

素直に声に出して、その感情を他人に伝えることのできる主人公に嫉妬すらしました。

繰り返す『ターン』
でも少しずつ前に進んでいて
最終的には新しい『ターン』へ移っていく。

その過程が素晴らしかったです。

北村薫が心底好きだなあと、思いました。


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